KEMIGAWA BEACH UNION
検見川ビーチ連盟 SINCE2006
検見川の浜
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自分が検見川の浜に来て25年以上が経ちます。
数々の流失事故等がありましたが、その中でも、死亡事故に至った重大ケースを紹介します。
過去におきた海難事故を例にあげて、これを見た方が学び、悲しい事故を防ぐ事に繋がればと思っています。
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◆事故例 ① 南西で起きた事故10月 発生場所:Y字突堤

この日は、夕方にかけて南西風(オンショア)が強まる予報でした。
1人で遊びに来ていたAさんは、まだ、歴も2年未満で、ようやくプレーニングを覚え楽しみが見え始めたレベルの方でした。
当時の検見川の浜の駐車場の閉門時間は17:00。
夜間の利用は出来ない為に、閉門時間には、全ての車が駐車場内から退出する事になっていました。
17:00が近くなって、その日の風を楽しんだ方達が駐車場を出ようと思った時、おそらくウインドサーファーの方の車であろうキャリアの付いた車が駐車場に1台だけ残っていました。
もちろん、最後に海から上がる際には、海上にセイラーは居ませんでした。
周りに人影も無く、不審に思った方達によって捜索活動が始められました。
海上保安庁にも連絡を取り、手分けして捜索活動が行われましたが発見に至らず、翌日になって、Aさんはご遺体で発見されました。
発見場所は中央にあるY字突堤。
当時は、突堤内側から上に上がる為の手すりが付いていない状態で、ここにはまってしまったら、逃げる事が困難な状況でした。
検見川の浜中央突堤
◆この死亡事故は防ぐ事が出来たか・・・?

①単独セイリングによる事故
1人で遊びに来ていた為に、捜索活動の開始が遅れた事が死亡事故に繋がったと考えられます。
早くに戻っていない事が分れば、日没を迎える前に発見出来た可能性が高い。
事故が起きたのは10月で、17:00過ぎには暗くなってしまう季節でした。
周りの人に挨拶を行い、自分の存在を知ってもらう。
そして、海から上がった際には周りの人の帰着を確認し合う。
これらの事が行われていたら、死亡事故には至らなかった可能性が高いと考えられます。


②技量を考えたセイリングを心がける
ウインドサーフィンの楽しさを覚え始めた頃は特に無理をしがちです。
常に、今、トラブルが起きたら、自分は岸に戻れるか?を考えてセイリングしましょう。
おそらくAさんも、風が上がって来たのを楽しんでいた際に、Y字突堤沖で沈をしてしまい、そのままY字突堤にはまってしまったと考えられます。

③危険ヶ所を知る
南西等のオンショアが強めに吹くと、Y字突堤沖合は特に不規則な風波が立ち易く、うねりの大きさも人の身長を越えるほどになります。
このような状態では、セイルアップも難しくなりますし、上級者の方でもウオータースタートがしづらくなります。
危険ヶ所を知り、注意する事で重大事故に発展する事を防げます。

④浮力補助になるジャケットの着用
Aさんは、ライフジャケットを着けていませんでした。
ライフジャケットは自分の体を浮かせてくれる補助をしてくれます。トラブルがあった際にも落ち着いて対処が出来ますし、体力の消耗が抑えられ、万が一の時に生存率が高まります。

⑤陸の上では汗をかくぐらいのスーツを選ぼう
トラブルが生じ、長い時間、海水に浸かる事態に陥った場合は、スーツによる保温力は生存率を高めます。
冷えから足が攣る事も抑えられます。足が攣ってしまうと、セイリングが不能になり深刻な事態に発展する事が多くなります。暑いからと言って、あまり軽装にならずに、何かあった際の事も考えて着るスーツを選びましょう。

⑥その日の気象情報を確認
今日は、どのくらいの風の強さになるか? 急な変化はあるか?
このような情報を入手しておけば、風が上がってきた際の浜に戻る判断材料になり、重大事故に繋がる事を防げます。
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◆事故例 ② 北西で起きた事故12月 発生場所:突堤沖合 

この日は、北西風が(冬場に多い右サイド)強めに吹き、前線通過時には突風を伴う予報でした。
休日とあって、浜には沢山のセイラーが訪れ賑わっていました。
自分は、早目に海から上がり、ショップに戻って片づけをしていました。
と、その時、「ドーン」と言う轟音と共に強烈な北西の風が吹き始めました。
浜に多くの方が残っていた為に直ぐに浜に戻りました。
この時、すでに爆風は治まり、風速は8m/sぐらいに戻っていました。
浜に置いてあったボードが全て飛ばされ、駐車場内も騒然としていました。
まるで竜巻のような風が吹いたそうです。
各ショップのインストラクターの子達に、全員の無事の確認が取れているかを確認し、その後、浜に行き、風下の稲毛側の突堤をチェックしに行きました。
そこで、ボードのみが海上に漂っているのを発見。
ボードを回収後、突堤沿いを確認し、沖合も確認を取りましたが、人影は見当たらず、もう一度、駐車場で帰着の確認を取りましたが、戻っていない方は居ないと言う事でした。
ジョイントベースが付いたままだった事もあり、セイルを片づけた後、突風に間にあわず、強風にあおられて、陸にあったボードが海に飛ばされて漂ったものと判断し、とりあえずボードを預かりショップに帰りました。
ショップに戻り数分後、消防車と救急車がサイレンを鳴らし浜の駐車場に入って行くのが見えました。
ただ事ではない事態がおきたな・・・と思い、浜に戻ると、ウェットスーツを着た消防士の方が稲毛側の突堤に走って行くのが見えました。
第一発見者はウインドサーファーのAさん。人だと確認は取れなったが、不審物を海上に発見、仲間と共に確認をしたら、うつ伏せになってウエットスーツを着た男性のウインドサーファーだったそうです。
皆で陸に引き揚げ、Aさんが人工呼吸を行い蘇生活動を行ったそうです。
到着したレスキュー隊の人によっても蘇生活動が行われ、その後、病院に運ばれましたが、その方は亡くなられてしまいました。
◆この死亡事故は防ぐ事が出来たか?

①単独セイリングによる事故
1人で遊びに来ていた為に、確認が取れず初期の捜索活動が不完全だった。
ボードが海に漂っているのを発見した際に、もっと、しっかりと捜索活動が行われ、海上保安庁やヨットハーバーにも協力を要請していたら、早くに発見されて助かっていたかもしれません。

②その日の詳しい気象情報を入手 ゲレンデ特有の気象の変化を知る。
当日は、前線通過による突風が吹く事は気象情報で伝えられていました。
実際、突風が吹く前には予兆があって、多くの方は浜に戻っていたそうです。
おそらく、亡くなられた方は、その変化に気が付かなかったか、風速が上がったのを楽しんでいたか・・・。
何れにせよ、戻るのが遅れ、海上で突風を受けたものと考えられます。
リグ部がジョイントから外れ、ボードからも離れてれてしまったと思います。
その際に気を失ったか、自力で岸に泳ごうとしたが、途中で溺れた可能性があります。
事前に気象情報を入手しておけば、雲の変化などを気にしていたはずです。
そうすれば、戻る判断が遅れる事も無かったと思います。
亡くなられた方は、ウインド歴が20年以上のベテランの方でした。
検見川の北西の風は風速の変化が激しく危険です。そのゲレンデ特有の気象の変化を知る事も事故回避に大切です。

③浮力補助になるジャケットの着用
亡くなられた方は、ライフジャケットを着けていませんでした。
ライフジャケットは自分の体を浮かせてくれる補助をしてくれます。それに近い物でもウエストハーネスと併用すれば、自分の体を浮かせていられる浮力が出ます。
トラブルがあった際にも落ち着いて対処が出来ますし、体力の消耗が抑えられ、万が一の時に生存率が高まります。
突風は長く吹き続けたものでは無く、30分以内に止んでいます。
風が落ち着いてから、岸に戻る事も出来た可能性があります。
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◆事故例 ③ 春一番南西で起きた事故

この日は、春一番が吹く予報と休日が重なって、多くのセイラーで浜は賑わっていました。
春一番らしく、3.7㎡を使用するようなコンディション。
そして、陸では春一番特有の暖かさでしたが、海水は冷たい状態でした。
亡くなられたAさんは、自分と同い年。当時35歳ぐらい。
ウインド歴も20年以上、強風コンディションもこなす上級者の方で、長くお店に通ってくれていた常連のお客さんでした。
当日も、「久し振りに海に来たよ~家族もいるし、忙しくてね~」「これで今年も春が来るね~。いい風を楽しもう」って、会話していました。
悲報を受けたのは、自分も陸に上がっていた時でした。
西の空に黒い雲が発生し、明らかに前線通過の予兆でした。
そして北西の突風が吹き、浜は砂嵐に。
そんな中、「溺れた人がいて海浜病院に運ばれたよ」「お店のスッテカーが貼ってあったから、iwaちゃんのとこのお客さんだよ」
「え?」
何時もの見慣れた顔は近くに駐車して一緒にいたので、初めは誰の事を言われたのかは分りませんでした。
直ぐに、発見場所の海浜病院前の浜に、砂嵐の中、走って向かいました。
道具を見て愕然としました。
朝、会話していたAさんの道具じゃないか・・・。
道具を駐車場まで運び、片づけ、直ぐに、運ばれた海浜病院横の救急医療センターに走って向かいました。
第一発見者の方から聞いた話です。
ボードの上に座り込んでいるAさんを発見し、疲れたのかな・・・と思い、再度、ジャイブして海浜病院前に行ったら、ボードから離れて岸にうつ伏せで打ち上げられていたそうです。
警察の方から色々と聞かれました。
本人の身元が分らないと言う事で、自分が確認の為に治療室へ通されました。
顔がむくんで、別人になったようなAさんに、初めは自分も確信が持てませんでしたが、身に着けていた見慣れたウエットスーツ、回収した道具がAさんの事である事から、Aさんに間違いないと。
車が検見川の駐車場にあるから、開けて免許証を見れば間違いないと。
お店でAさんの自宅は分るからご家族に連絡を取って下さい。
それから、警察の方が動き、自宅に電話をしたが、奥さんと子供さんは外出中で連絡が取れたのは夜になってからでした。
2日間、昏睡状態が続き、3日目に奥さんから連絡が入りました。
「意識が戻らずに、今朝、亡くなりました」と・・・。
返す言葉が見つかりませんでした。
◆この死亡事故は防ぐ事が出来たか?

後から聞かされた話なのですが、Aさんは溺れて亡くなった訳ではないと。
溺れる前に心停止が起きていると。

~防ぐために気を付けられる事~
検見川以外でも、自分が知る、セイリング中に亡くなられた方は、ウインド歴が20年以上のベテランの方が多いです。
そして最も多いのが心不全です。
その事故が起きるのは秋から冬にかけて(10月~11月頭)と、冬から春(3月)にかけての季節の変わり目です。
何れも、陸に居る時の気温は高いが、海水温は低く、陸と海での温度差が大きい季節です。
しかも、疲れている時や、早朝に起きています。
Aさんは違いますが、中には、お酒を飲んで海に出たとか、前の晩に深酒をしていた言う話も多いです。
体調管理は自分でしかできないリスクマネージメントです。
とにかく気を付けるしかないです。
疲れている時は自分からセイリングを控えましょう。
 
◆まとめ
事故例①~③まで、全て亡くなられた方にはご家族がいました。
朝、「海に行って来るね~」と出掛けた人が急に戻らない。
その切なさは計りしれません。
しかも遊びの中で起きた事故です。
今一度、自分が行える海に出る際のリスクマネージメントを考えてみて下さい。
事故は悲しいです。
防げる事故は防いで、セイリングを楽しみましょう。
 
 テキストby岩下 2012
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